「楽」では意味がない? ウォーキング&ジョギング考

 歩くという動作は全身の8割の筋肉を稼働させると言われ、下半身だけではなく上半身の筋肉にも影響を与えて、誰もができる全身運動ではあります。

 

 体力向上、健康増進のためには是非ともやっておきたい運動ですが、意識しておかなければならないことがあります。

 

 それは、「楽に」「漫然とやらないこと」なのです。


一日一万歩は効果がない?

 これまで、「一日一万歩を目標」が推奨されてきましたが、2019年に発表された信州大学増木静江教授らの発表によりますと、早歩きと普通歩きのグループに分けて実験を行ったところ、普通歩きによる運動(最大体力の40%程度)では、どんなに長時間行ったとしても、体力向上の効果が得られなかったそうです。

 

「一日一万歩」を目指して歩いてきた方々には、非常にショッキングな発表ですね。


「ややきつい」運動を意識しよう

 では、どんな運動だと効果が出てくるのか。

 

 同教授の研究によりますと、最大体力の70%に相当する「ややきつい」早歩きを行うことで、体力の向上が確認できたということです。

 

 日本スポーツ協会も最大能力の50~60%の強度の運動、やや速いくらいのウォーキングを行うことで、代謝の改善が認められるということですので、体に強い負荷を与えるということが、体力の向上や健康増進に繋がるというわけです。

 

「ややきつい」といっても、人によって違いがあります。

 

 目安としては、運動終了後、額に汗が滲んで拭う。胸の鼓動がはやくなり、息がはあはあ乱れる。

 

 これくらいの強度が必要になってくるというわけです。


時間はどれくらい?

 長時間行わなければならないわけではありませんし、息を上げる運動はそれほど長くは続きません。

 

 日本スポーツ協会で推奨するのは

 やや速いくらいの1時間ウォーキングを週3~4日、或いは毎日30~40分

としております。

 国際標準の運動処方としてはそれくらい実施すると数か月で筋力持久力も向上するとのことですが、黙々とやるのは地味でやりたがらないですわね。

 

 そこで、信州大学能勢博教授が推奨するのは

 速歩3分ゆっくり歩き3分を交互に行い✕5セット(速歩15分、ゆっくり歩き15分の計30分)を週4日以上を目標にした「インターバル速歩」というものです。

 

 このインターバル速歩は連続して行う必要はなく、朝10分、昼10分、夜10分とばらばらでも良く、また早歩きの1日の合計が15分になれば、ゆっくり歩きが長くなっても良いとのことです。

 

 集中して運動を行う時間が無いという場合、買い物や徒歩移動などで、早歩きを心掛けると良いということでもありますね。

「インターバル速歩」について、詳しくはこちら!



ウォーキングの欠点

 ウォーキングも負荷を与えれば、インターバル速歩のように体力向上や健康改善につながる運動もありますが、学生などの若い世代には関心が低く、能勢博教授の著書「ウォーキングの科学」によると、中高年の5割くらいしか実施しなかったとか。

 

 自ら運動に関心持つのは、大概は不健康になってからですから、辛いのは嫌だし恥ずかしがったりもするので、まだそこまで悩んでいない段階で行わせるというものは、なかなか難しいものがあると思います。

 

 特にウォーキングは、体力のない若者であっても抵抗が強いでしょうから、若い方で始めてみたい、でもウォーキングはちょっと……なんて考えてしまう方には、「ゆっくりジョギング」+「早歩き」はどうかと提案したいところです。

 

 上記「ウォーキングの科学」でも、体力の高い人でインターバル速歩では最大酸素消費量の70%に達成しない人は、「ジョギングやトレイル・ランニングでよい」としております。最大酸素消費量の70%以上になればいいわけですね。

ウォーキングの基本
ウォーキングの基本
走り方の基本
走り方の基本


走るためのステップ

 谷川真理氏は初心者は「2週間、30分は歩いて走らないこと。怪我をするから」と足を馴らすことを勧めておりますが、ステップの目安としては、「金哲彦の今日から始めるウォーキング&ランニング」から参考にしてみましょう。

走り方のステップアップ

 左図のようにウォーキングとジョギングを組み合わせて行っています。

 

 長距離走ることよりも、フォームや負荷など意識していきましょう。

 

 初級の段階のように、「走る」と「インターバル速歩」を混ぜていけば、若い初心者の方でも恥ずかしがらずに取り組めるはずです。

参考



「歩く」、「走る」はどなたでも行える全身のトレーニング法です。

 

 ただ、漫然と歩いたり走っていては良い体、痩せやすい体、健康改善にはなかなかたどりつけません。

 

 少しでも負荷を与えて、筋肉を刺激し、より良い体づくりを目指していきましょう。